【完】鵠ノ夜[上]
「あの子の世界の中心は、
君たち五人で回ってるんじゃないかな」
「……そうだといいですけど、」
「幼い頃からたくさん頑張ってきたの知ってるけどね……
やっぱり雨麗ちゃんは、まだまだお子様だよ」
自分より年が上の人から見れば、誰だってそう見えるかもしれない。
和璃さんにそう言われると、レイもまだ子どもなんだ、と、どことなく安心感がある。だからってどうする訳でもないけど。
「ねえ、和璃。
迷惑かけたから謝りたいんだけど、憩見なかった?」
「見てないよー。
この天気だから外にはいないと思うけど」
どこ行ったのかしら、と部屋に顔を出した彼女が、悩むように視線を下ろしたあと。
あ、と思い出したように顔を上げて、「また心配かけてごめんなさい」と俺らに謝った。
「風邪ひいてない?大丈夫?」
「ありがとう、ユキ。
寝てる間に雛乃ちゃんが濡れたパーカーとバスタオルを交換してくれてたから、寒くなかったのよ」
「ん? それって雛乃じゃなくていこ、」
「──雨麗」
ふたりの会話を遮るように。
かかった声に、レイは「憩どこにいたの?」と首を傾げる。改めて見たら、たしかに小豆さんとよく似てる。……小豆さんがメガネ取ったら、そっくりなんじゃない?
「お前ほどじゃねえけど雨に濡れただろって、香夢がしつけえからな。
シャワーだけ済ませてきた」
「ああ、そういうこと。
……ありがとう憩、迎えに来てくれて」