【完】鵠ノ夜[上]



「おはようございます。

どうされましたか? 体調に問題でも?」



「ううん……水欲しい」



「すぐにお持ちしますね」



そう言って彼が出ていくとすぐ、レイは身体を起こす。睡眠大丈夫なの?と聞けば、学校の休み時間に寝ると返事する彼女。

……騒がしいし、落ち着いて眠れないだろうに。



「あと……行かないでくれてありがとう。

もう落ち着いたから、胡粋も準備してね」



「ん。……じゃあ俺も、部屋もどるよ」



「うん、またあとで」




ひらりと手を振った彼女。やっぱりすこし前まで弱さを見せていたとは思えないほどしっかりしたいつも通りの態度で。

小豆さんと入れ違いで部屋を出ると、別邸にもどる。



「ん? 胡粋、朝からどっか行って……

もしかして、お嬢のとこ行ってたりした?」



「うるさいよ。準備してくる」



「こいちゃんおはよぉ。

シュウくん以外はみんな起きてるの、早起きだねえ」



「おはよう芙夏。

あいついつも遅いじゃん。遅刻はしてないけど」



リビングで雪深と遭遇し、芙夏とは階段で鉢合わせ。

はとりはどうやらリビング横の洗面所にいるようで顔は見てないけど、起きてないのはシュウだけらしい。シュウが遅いのはいつものことだ。



そのまま二階に上がり自室に入ると、着替えを済ませて再び下に降りる。降りる前に、階段から一番近いシュウの部屋をノックして声をかけておいたけど、どうせすぐには起きない。

芙夏と入れ替わりで洗面所を使って身支度を済ませてからリビングの定位置に座ると、雪深がちらっと俺を見た。



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