【完】鵠ノ夜[上]

◆ 咲き乱れて、恋のうつつ








「芙夏さん、お誕生日おめでとうございますー!」



パンッと。

小気味良い音を立てて、クラッカーが鳴り響く。それから飛び出たカラフルな紙吹雪が、この家の庭で咲いていた満開の桜を彷彿とさせるようにひらりと揺蕩って舞った。



「え、えええっ……え!?」



これでもかってほどに目を見開いて、驚くぼく。

別にオーバーリアクションを取ってる訳でもなんでもなく、素のリアクションだ。唐突に別邸に訪れたレイちゃんがぼく以外のみんなに、先に夕飯に行くよう指示したのは確かに疑問だったけど。



まさか。



「お誕生日おめでとう、芙夏」



……ぼくのため、だったとは。

レイちゃんや五家のみんなに加えて、組員さんたちもいるせいで部屋は人口密度が高い。真ん中に置かれたご馳走と大きなケーキ。それも手作りなようで、ゆきちゃんがにこりと笑みを見せた。




「スポンジにぜーんぶ生クリーム塗ったの俺だよ〜」



「デコレーションは俺ね」



「えっ、これゆきちゃんとこいちゃんが作ったの!?」



いやいや、クオリティ高すぎじゃない!?

どう見ても男子高校生が二人で作ったとは思えないんだけど……!っていうか、普段仲悪いくせにたまにめちゃくちゃ仲良いじゃん!



「ふふ、ふたりとも手先が器用だから」



「って、言ってるけどさ〜?

この計画立てたのもケーキのスポンジ焼いたのも、あと色々指示出してくれたのぜんぶお嬢だから」



今に始まったことじゃないけど、レイちゃんってやっぱり凄い。

「これは芙夏さんのご両親からっす。こっちは御陵の~」と次々腕に乗せられていくプレゼント。ありがとうとお礼を言いながら受け取っていれば、あっという間にプレゼントの山が出来上がった。



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