【完】鵠ノ夜[上]
「お前、名前に夏って入ってんのに5月生まれって。
……完全に春生まれじゃねーか」
「そんなこと言うけどシュウくんだって12月生まれじゃないじゃんー」
「ヒイラギとクリスマスをイコールで結ぶようなヤツとは仲良くなれねーな」
「なにそれ理不尽……!」
名前に夏が入ってるとか言ってきたシュウくんに言われたくないんだけど……!
まあ、言ったら絶対言い返されるか睨まれるかのどっちかだから、言い返さないけど。……怖いもん。
「っていうか、その理論でいくとレイちゃんは梅雨の時期生まれっぽいじゃーん。
レイちゃん、6月生まれなの?」
ケーキにろうそくを立てていたレイちゃんに声をかけると彼女には話が聞こえていなかったようで、不思議そうに首を傾げられた。
腕の中のプレゼントをひとまず置きながら今の話をすれば、彼女は「ううん」と言ったあと。
「わたしの誕生日は4月よ」
フリーズ。
……え? 待って、いまなんて?
「過ぎてるじゃん……!!
なんで言ってくれないの!?っていうか、ぼくのお祝いですらこんなに盛大なのにレイちゃんのお祝いしてて気づかないはずないと思うんだけど……!」
なんで誰も知らないの!?と、まわりの組員を見回せば。
「お嬢って4月生まれだったんすか」
まさかの。 ……まさかの!!
そんなことある!?と言葉を見つけられないぼくたちに、レイちゃんはくすっと笑う。いやいや、笑ってる場合じゃないよレイちゃん……!
「わたしの誕生日は、小豆と、わたしが5歳になる前から御陵にいる関係者ぐらいしか知らないわよ。
だからみんなが知らないのは当たり前なの」