物語の行き着く場所
おばあちゃんとの思い出
私のおばあちゃんがしてくれた、あるお話は私のお気に入りだった。
小さい頃から何度も何度もせがんで、何度も何度も聞かせてもらったお話。

でも、おばあちゃんが亡くなってからは悲しくて、思い出すと泣きたくなってきてしまうから思い出さないようにしていた。


そんなある日、道を歩いていた私は突然男の人に話しかけられた。

「これは君のではないかな?無くしてしまうよ?」

そう言った男の人は、何も持っていなかった。

「これ、って……」

何も持っていないのに…。
私は何かの冗談かと思った。

「……なんの事か知りません。」

そう言うと、男の人は困ったように笑った。

「おばあちゃんと小さい女の子…。これはとても大切なものに見える…君のじゃないのかい?」

「おばあちゃん……?」

おばあちゃんと聞いて、立ち去ろうとしていた私の足が止まった。

「もうすぐ、君のもとから消えてしまうよ?きっかけが無ければもう、思い出すことも出来なくなるかもしれない。それでもいいのかい?」

「……。」

立ち止まって下を向く。

「もし君のもので、要らないのなら、あると辛くなるだけなのなら私が持っていくよ。いいね?」

「えっ…あ…待っ…!!」

男の人は言うが早いか、スーッと消えていく。

私は男の人に向かって、急いで駆け出した。
ぶつかりそうな勢いだった。でもきっと、男の人が言っていたのは私の大切な『もの』。

その瞬間、私の意識は途切れた。
< 2 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop