一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「ところで沢口さん、俺もティラミスひと口食べたいなあ。沖田課長も味見したし」
「ダメですよ。これは私が全部食べます」
彼女は渡辺くんのお願いを笑顔で断る。
「沢口さんのいけず」
わざといじける渡辺くんを見てみんなクスクス笑う。
それから食事を終えると、会社に戻ろうとする三人に声をかけた。
「私は部長に頼まれた物があるのでちょっと寄り道していきます」
私の言葉に亜希ちゃんが相槌を打つ。
「ああ。手土産部長に頼まれてましたよね」
「うん。あっ、沖田くん、頼まれた打合せの資料は机の上に置いておいたから」
資料のことを思い出して怜に伝えると、彼はニコッと微笑んだ。
「ありがと。助かる」
みんなと別れて近くにある有名和菓子店に行き、頼まれた羊羹を買って会社に戻ろうとしたら、バッグに入れておいたスマホがブルブルと震えた。
亜希ちゃんか誰かが電話をかけてきたのかと思ってスマホを見たら知らない番号。
そのまま無視しようとしたのだけれど、誤って通話ボタンに触れてしまった。


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