一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「……ちょっと辛くて」
息を吐きながら返したら、彼が私の顔を覗き込んで確認した。
「うちの店まで歩けるか?」
返事をするのも苦しくてコクッと頷くと、彼は私に手を貸した。
鉄板焼きの店まで行き、中に入ると、奥にある部屋に通された。
四畳半くらいの広さで黒いレザーのソファとテーブルが置かれている。
「ちょっと休んでて」
怜の叔父さんはソファに私を座らせ、部屋を出て行く。
座っていると、いくらか気分が楽になり、呼吸も落ち着いてきた。
彼のお陰で助かった。
あのままひとりでいたら気を失って倒れていたかもしれない。
コンコンとノックの音がして怜の叔父さんが戻ってきた。
コップに入った水を私に差し出す。
「怜に連絡しておいたから少し休んでいくといい」
「すみません」
礼を言いながら水を受け取り少し口にする。
「さっきよりはちょっと顔色がよくなったか。怜にこき使われているなら俺から注意しておくぞ」
冗談ぽく言う彼の言葉に思わず笑みが溢れた。
「そんな酷い上司じゃないですよ。寧ろ定時で帰れって煩く言われます」

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