一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
三月は期末の処理があって忙しい。
ただでさえ最近怜が私の体調を気にして定時になると「早く帰るように」と言うのだ。効率よくやらないと仕事が終わらない。
買ってきた羊羹を部長室に持って行くと、竹下部長にも心配された。
「山本さん、早退しなくて大丈夫かい? 沖田くんが『山本が倒れた』って血相変えて言ってたけど」
「ちょっと気分が悪くなっただけで、今は復活したので大丈夫です」
笑顔を作る私に部長は優しく微笑んだ。
「ひとりで背負わず、無理しないでね」
「はい」
部長の気遣いが嬉しかった。
私は同僚にも上司にも恵まれている。
ここにいる間は、精一杯仕事しなくちゃね。
みんなに元気をもらって、午後はなんとか仕事に集中できた。
このままもう少し仕事をしたい時計思ったのだけれど、今日も定時過ぎに怜が戻ってきて私の肩を叩く。
「もう六時過ぎた。帰れよ」
「わかってます」
少しムスッとして返す私に彼は釘を刺す。
「山本が帰らないと沢口さんも帰れない。早く机の上片付けるように」
「はい」

< 108 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop