一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「心配しすぎ」
わざと呆れ顔で言うが、彼は笑って言い返す。
「雪乃は心配しすぎがちょうどいい。じゃあ俺これから打合せだから」
私の頭をポンと叩いて彼は去っていく。
怜だって忙しいのに。
なにやってるんだろう。しっかりしなきゃ。
あと二週間、彼をしっかり支えてよう。
会社を出ると、正面玄関前に停まっていたタクシーに乗り込んだ。
シートにもたれかかり、フーッと息を吐く。
すでに行き先は怜が知らせていたようで、私は乗ってるだけ。
甘やかされてるな。
こんな風に私のことを心配してくれるのは彼だけだ。
ずっと彼の近くにいられたらどんなにいいだろう。
彼と思いが通じなくても、一緒に仕事ができるだけで幸せだった。
でも、私には許されない。
もう私の人生は私のものではないから。
しっかりしなきゃ。
彼に心配をかけちゃいけない。
しっかり働いて、笑顔で会社を辞めよう。
今後の生活がどんな地獄でも、私は怜のいるこの会社や一緒に働いているみんなが好きだから。
そんなことを考えているうちに、寮に着いた。
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