一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

「俺はこれくらいがちょうどいいけど」
まるで夫婦の会話だ。
こんな日常が続いたらいいのにね。
多分、こんな風に彼と食事をするのは最後かもしれない。
この時間を楽しもう。
食事が終わって身支度を整えると、怜と一緒にマンションを出た。
「じゃあ、寮に帰ったら連絡して」
マンション前で足を止める彼をじっとりと見る。
「心配性」
「そんなこと言うならうちに強制連行するけど」
私の態度が気に入らなかったのか彼は意地悪く言った。
「わかりました。ちゃんとメッセージ入れる。行ってらっしゃい」
怜に手を振るとちょうどタクシーが来て、彼が私の頭をクシュッとした。
「行ってきます。足、気をつけろよ」
私がタクシーに乗ると、彼は後ろ手を振って駅の方へ向かった。その後すぐにタクシーが動き出して二十分ほどで会社に着く。
オフィスに行くと、すでに亜希ちゃんがいた。
「おはようございます。あれ？　雪乃先輩、今朝は沖田さんと同伴出勤じゃないんですね」
フッと笑みを浮かべる彼女を見て顔を顰めた。