一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

「それは妄想。沖田くんは将来うちの会社の社長になる人だよ。きっといいところのお嬢さんと結婚する」
なるべく平静を装って否定するも、亜希ちゃんにやり返された。
「それは偏見です。沖田さんは政略結婚なんてしないと思います。むしろ沖田さんは縁談とか辟易してるって渡辺さんが言ってましたよ」
「ああ。毎月縁談があって悩みの種だってさ。山本さん、沖田課長を救ってあげてよ」
渡辺くんに頼まれたが、素っ気なく返した。
「縁談だっていい出会いがあるかもしれないよ」
「先輩、あの沖田さんにロックオンされてるんです。どこへ行っても追ってきますよ。観念した方がいいです」
少し興奮気味に言う亜希ちゃんの言葉に渡辺くんが大きく頷く。
「うん。素直に降参した方がいいよ」
ふたりともお願いだから私に夢なんか見せないで。
亜希ちゃんは、福井に帰っても怜が追ってくると思っているのだろうが、万が一彼が福井にやってきても私はもう松本の婚約者か妻になっている。
どんなに願っても私は怜のお嫁さんにはなれないのだから。