一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「そうなんですね」
「俺は自由人だからな。その点、怜は周囲を引っ張っていく力があるし、経営者向きだな」
怜の話が出てきて、彼の顔がパッと頭に浮かんだ。
大阪での仕事も無事に終わっただろう。
「彼は人の上に立つために生まれてきたような人ですから」
「だがな、あいつも人間だ。心の拠り所が必要なんだよ。怜をよろしく頼むよ」
真剣な口調で言う修二さんの言葉に困惑した。
「……私には無理なんです。一緒にいられたらいいんですけどね」
それは誰にも言うつもりがなかった本心。
彼はなにか察したのか、信号待ちの時にチラッと私に目を向けた。
「今にもどこかに行っちゃいそうなセリフだな」
修二さんのその言葉を聞いて否定出来なかった。
窓から見える月をただじっと見つめる。
ビルの谷間から見える月が静かに光っていた。
「……月が綺麗ですね」
「ああ。本当だな。なんだろう。かぐや姫を車に乗せてる気分になってきた」
「ロマンチックですね」
最近、かぐや姫の気持ちがよくわかる。
< 138 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop