一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
9、最後の出勤日
「雪乃先輩、今日はランチどうします?」
お昼の十二時になり、亜希ちゃんがデスクの上の書類を片付けながら尋ねた。
今日は三月三十一日。私がこの会社で働く最後の日。
もう寮の部屋は引き払っていて、今朝は会社の近くのビジネスホテルから出勤してきた。
荷物は福井に送らず、トランクルームを借りてそこに移した。
寮だったから家具は備え付けで、私の荷物といったら服と靴と本ぐらい。段ボールにするとたった五箱だった。
「今日はちょっと無理かな。サンドイッチでもつまむよ」
キーボードを打っていた手を止めて答えたら、彼女に釘を刺された。
「ちゃんと食べてくださいね。お昼抜いちゃダメですよ」
妊娠がわかってから、彼女とお昼を一緒に食べていない。
悪阻は吐くまではいかないけど、食べ物を見ると食欲をなくす。というか、気分が悪くなる。
ただ、オレンジのゼリーはスーッと胃の中に入っていくから、お昼はいつもコンビニで買ったゼリーを食べている。
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