一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
今、怜にオフィスに戻って来られたら困る。
亜希ちゃんには感謝しかない。
怜とのことをもっと突っ込んで言ってくるかと思ったけれど、ここ最近は仕事以外で彼に触れることはなくなった。
彼のことを思うと罪悪感を覚える。
妊娠したことを伝えずに、赤ちゃんを産むことを許してほしい。
いや、許してくれるわけがないか。
私に赤ちゃんができたって知ったら、彼まで福井に来てしまいそうだ。
「ありがとう。またね」
彼女背中を撫でると抱擁を解いた。
「はい。また」
亜希ちゃんもさよならの言葉は口にせず、部長室を出て行く。
私も部長室を出ると、自分のデスクを片付けた。
カーディガン、膝掛け、気に入って使っていた文具を紙袋に入れていく。
デスクが片付くと、最後に後任の連絡と最後の挨拶メールを送信してパソコンの電源を落とす。
「これで全ての仕事が終わった」
バッグと紙袋を持ってオフィスを出るが、ドアのところで一旦立ち止まって深々と頭を下げた。
「今までお世話になりました」

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