一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
今ごろ送別会は盛り上がっているだろう。
私がいなくたって問題はない。
会社を出るとビルを数秒見上げ、東京駅に歩いて向かう。
ずっと我慢していたが涙が込み上げてきた。
今夜もビルの谷間から月が見えたが、涙でぼやける。
「終わっちゃ……た」
大学を卒業してから沖田不動産に就職して、新人研修では怜と同じ班でいろんな課題に取り組んで……。
配属先も彼と同じで……、ずっと頑張って仕事をしてきた。
今までのことが走馬燈のように頭に流れ込んでくる。
大事な思い出だ。
東京駅に着くと、カフェで高速バスの出発時間まで時間を潰す。
今まで使っていたスマホのICチップを抜いた。
「これでもう怜から連絡はこない」
自分にとっても彼にとってもその方がいい。
連絡手段を残しておいたら彼に頼ってしまうかもしれないから。
今の私は怜にとって迷惑な存在でしかない。
彼の同意を得ずに妊娠してしまったのだ。
ピルを飲んでいたから妊娠しないと過信していた私のせい。
< 157 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop