一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

久々に会うのだから、痩せたのなんて一目瞭然だろう。
変に気を遣わせたくはない。
少し心配そうな顔で私を見る兄に笑顔を作って微笑んだ。
「三月は期末だったから仕事が忙しくて。お父さんや美久さんは元気？」
美久さんというのは兄の奥さん。兄の高校時代の同級生で、私にも優しく接してくれる。
「ああ」
私の質問に小さく頷く兄。
兄も痩せたのか葬式の時よりも頬が痩けたような気がする。
きっと私のようにいっぱい悩んだに違いない。
「そう。よかった」
相槌を打ったが、挨拶のような会話が終わるともうなにを話していいのかわからない。
なにか気の利いた話でもないかと考えるも、話題が浮かばない。
一分くらい沈黙に気づまりを覚えた時、兄が縁談の件を切り出した。
「雪乃、松本悠馬との縁談、無理しなくていいんだぞ」
兄の発言に驚きつつも、私に逃げ道を作ってくれようとしていることが嬉しかった。
「お兄ちゃん……」
「お前を守れなくて……ごめん。ずっと後悔してた。もっと強く親父に反対すればよかったって」