一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
彼女は背は私と同じくらいで、長い黒髪を後ろでひとつにまとめている。
エプロン姿の彼女は朝から化粧もちゃんとしていて絵に描いたような若奥さんだ。
うちに嫁に来ていろいろ気苦労もあると思うが、元気で溌剌としている。
兄は本当にいい人と結婚したと思う。
「雪乃ちゃん、いらっしゃい。バスだったから疲れたでしょう? 眠れた?」
「おはようございます。バスではあまり寝てなくて……」
車を降りて義姉に挨拶すると、彼女は優しい目で告げた。
「朝ごはん食べたら少し寝るといいわ」
「はい。そうさせてもらいます」
ニコッと笑って後部座席の荷物取ろうとしたら、兄が私の肩を軽く叩いた。
「いい、俺が運ぶよ」
「あっ、ありがとう」と兄に言って家に入るが、もう自分の家という感じがしなかった。
「お邪魔します」と思わず口にする私を見て兄が苦笑いする。
「お前の家なんだから変な遠慮はするなよ」
「あ……うん」
曖昧に答える私に美久さんが明るく言った。
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