一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「雪乃ちゃんは二階の奥の和室使って。海、雪乃ちゃんの荷物部屋に運んでおいて」
「ああ」
ふたりはなかなか息が合っている。
夫婦仲は良さそうだ。
それだけでも嬉しい。
「雪乃ちゃんはご飯にしましょうか?」
美久さんの問いには答えず父のことを尋ねた。
「もう父は居間にいますか?」
家に入った時から父の存在を強く感じる。
神経がピリピリしてきて、自分でも顔が強張っているのがわかる。
「ええ。雪乃ちゃんを待ってからご飯にするみたいよ」
にこやかに答える彼女の言葉に小さく相槌を打つ。
「そうなんですね」
フーッと息を吐いて美久さんの後に続いて玄関の右手にある居間に向かうと、父がこたつに座ってパジャマ姿で新聞を読んでいた。
髪は短髪で白髪まじり、面長で目は細く、昔からメガネをかけている。
「お父さん、只今帰りました」
緊張した面持ちで挨拶すると、父は見ていた新聞からほんの一瞬顔を上げた。
「ああ、お帰り。美久さん、飯頼む」
ただ座ってご飯が準備されるのを新聞を読んで待つ父。

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