一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
昔と全然変わっていない。
祖母の葬式の時は葬儀場の宿泊施設に泊まったから、こういう父の日常を見ることはなかった。
「美久さん、私も手伝います」
彼女にそう申し出るも、にこやかに断られた。
「あら、疲れてるのにいいわよ。座ってて」
いいえ、父とこたつにいる方が疲れますから。
「手伝わせてください」
笑顔で主張して美久さんとキッチンに行く。
冷蔵庫や電子レンジなどの家電製品はどれも新しかった。
「じゃあ、ご飯よそってくれる?」
炊飯器を指差す美久さんに向かって頷いた。
「はい。あの、私は昨夜結構いっぱい食べたので少な目でいいです」
炊飯器の蓋を開けると、ご飯の匂いがして気分が悪くなる。
数秒息を止めて必死に耐える。
我慢よ、我慢。
今ここで妊娠がバレるわけにはいかない。
もし今父に知られたら、「子供を堕ろせ」と言われるかもしれない。
「雪乃ちゃん……? どうかした?」
私の異変に気づいた美久さんに笑って誤魔化した。
「なんでもないの。自分の足に躓いちゃって」
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