一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

「床、滑りやすいから気をつけてね」
私を気遣う彼女の言葉に小さく頷く。
「はい。気をつけます」
なるべくご飯をよそう時は息を止め、居間にご飯を運ぶ。
美久さんの手料理を食べるのは初めてだ。
焼き魚、里芋の煮物、玉子焼き、ほうれん草の胡麻和え、お漬物などの料理がテーブルに並ぶ。
兄もやってきて父の隣に座った。
美久さんも兄の対面に座り、父の対面の席に目を向けた。
「雪乃ちゃんはここね」
「はい」
コクッと頷いて席に座る。
ますます食欲がなくなりそうな席だ。
みんなでいただきますをして食べ始めたが、みんな無言。
だが、しばらくして父が沈黙を破った。
「雪乃、結納は明日の午後だ。準備をしておけよ」
その発言に思わず箸が止まる。
「明日？　来週じゃなかった？」
確認したら、父はフッと笑みを浮かべながら答えた。
「松本さんが式を早めたいと言ってきてな。お前と結婚するのが待ちきれないらしい。よかったじゃないか。高校の同級生だからお前も安心だな」