一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「いいから乗る」
「沖田くん心配性。全然ひとりで……帰れるのに」
シートに寄りかかってぶつぶつ文句を言う私を彼は呆れ顔で見る。
「今の状態だと駅の階段踏みはずして怪我する。住所は? まだ寮に住んでたっけ?」
いつだって私に対してはよき同期として接する彼。
この状況ならホテルに誘うことだってあるだろうに。
やっぱり女として見られていない。
いつもの私なら傷つきながらも笑って住所を教えただろう。でも、今日はそうしなかった。
「住所……ね」
泥酔した訳ではないが、ちょっと酔っているのかもしれない。
彼を困らせてみたくなった。
「家に帰りたくないって言ったらどうする?」
酔った振りをして彼を試すような言葉を投げかける。
いつだって冷静な彼を少し困らせてみたかった。
「素直に言え」と怒られると思ったのだが、彼は私に顔を近づけて声を潜めた。
「じゃあ遠慮なく」
低音のセクシーボイス。
その声に身体がゾクッとして一気に酔いが覚めた。
「え?」
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