一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
目が面白そうに笑っている。
この人は悪魔だ。
でも、彼とちゃんとケリをつけなくては。
「……わかった」
ゆっくりと立ち上がり、松本の目を真っ直ぐに見据えて返事をするが、兄が反対した。
「雪乃、無茶するな」
「大丈夫。ずっと逃げてたら私はこの人に負けたことになる」
兄に小さく笑って見せると、松本に視線を戻した。
「それじゃあ話をしましょうか」
「そういう気の強いところが好きなんだ。久々に高校の時の雪乃が見られて嬉しいよ」
松本が立ち上がって私の頬に触れようとしたので、咄嗟に叩いた。
「私に触れないで!」
「怖いね。毛を逆立てた猫みたいだ。ここの庭園でも散歩しよう。少しは穏やかな気分になるんじゃないか?」
松本の提案に小さく頷く。
部屋でふたりきりで話すよりはいいだろう。
彼が部屋を出て行くので私もあとをついていくと、ドアのところにいた美久さんが心配そうに私を見た。
「雪乃ちゃん、怒鳴り声が聞こえたけど大丈夫?」

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