一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
急ぐがタイミングよくエレベーターが来ない。
待っている間に雪乃と松本が庭園に移動するという話がスマホから聞こえてきて焦った。
とりあえず来たエレベーターに乗って一階に降り、庭園へ。
その間にブチッとお兄さんとの通話が途切れたがまた彼から電話がかかって来た。
「はい、沖田です」と電話に出ると、お兄さんが声を潜めて言った。
《雪乃と相手の方が庭園に向かったのですが、父と松本さんの父親が憤慨していて、今雪乃たちの様子を見に行けません。沖田さんにお願いしていいですか?》
決まっていた結納をぶち壊したのだからお兄さんもその後の対処が大変だろう。
「ええ。今庭園に向かっています」
素早く答えて電話を切り、全速力で走った。
すれ違った人に変な目で見られたが、気にしている余裕なんてない。
ようやく庭園に着くが、ドア付近に雪乃たちの姿はない。
「どこだ?」
そう呟きながら雪乃と松本の姿を探したら、ふたりの声が聞こえてきた。
「うちの融資がなければ、お前の父親の会社は危なくなるんだぞ」

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