一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

「ラウンジで休んでる。いろいろあって混乱してるみたい」
その返答を聞いて、兄と美久さんに告げた。
「怜を連れてお父さんのところに行ってくる。ふたりも来てもらっていい？」
大事な話をするから一緒にいてほしかった。
「もちろん」とふたりは声を揃えて返事をする。
四人で庭園を出てラウンジに行くと、父はすこぶる機嫌が悪そうに眉間にシワを寄せてコーヒーを飲んでいた。
「お父さん」
私が呼んだら、父は「なんだ！」とイライラした様子で答えたが、怜に気づき怪訝な顔をする。
「その人は？」
「彼は……！」
私の言葉を遮り、怜が名刺を取り出して父に自己紹介する。
「雪乃さんとお付き合いさせていただいている沖田怜です。彼女が先月まで勤めていた沖田不動産の同僚です」
「雪乃とお付き合い？　……沖田不動産の沖田？」
父は怜と名刺を交互に見ている。
名前が会社名と同じだから、経営者側の人間では？と考えているのだろう。
「父の会社です」
怜が付け加えると、父は急にピンと背筋を伸ばして深く相槌を打った。