一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
彼がバスルームから出てくる前にここから出て行かないと……。
どうせ会社で顔を合わせるのだから心を落ち着かせる時間が必要だ。
ワンピースを頭から被るが、焦っているせいでジッパーが布地に絡んでうまく上がらない。
「ああ、もうなんでこんな時に!」
小さく毒づき唇を噛む。
ぐずぐずしてはいられない。
ジッパーを上げるのは諦め、コートを羽織ると、玄関に転がっていたバッグを手に取り靴を履いて彼の部屋を出た。
それだけで息が上がっている。
だが、のんびり休む暇はない。
エレベーターに乗り、バッグの中を探ってスマホを取り出した。
時刻は午前六時十分。
アプリを開いてタクシーを呼び、手櫛で髪を整える。
マンションを出ると、停まっていたタクシーに乗り、急いで千駄ヶ谷にある会社の寮に帰った。
今日が休みならよかったのだが、金曜日で普通に会社がある。
息つく間もなくコートと服を脱いですぐにシャワーを浴びるが、身体中に彼がつけたキスマークがあってびっくりした。
首筋にも胸元にもお腹にも……至るところにある。

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