一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「俺は別に困らないけど」
沖田くんがよくても私が困る。
それに彼の態度が少し冷たく感じるというか、どこか刺々しい。
「沖田くん、なにか怒ってる?」
恐る恐る尋ねたら、彼は営業スマイルを浮かべて答えた。
「ああ。怒ってる。ようやく気づいてくれて嬉しいよ。さあ、乗って」
彼がタクシーを捕まえて、有無を言わせず私を乗せる。
なにをそんなに怒っているのか。
ニコニコ笑顔が逆に怖い。
こんなに機嫌が悪い彼は初めて見る。
「トラブル対応でなにかあったの?」
沖田くんが心配で尋ねるが、彼は一瞬呆気に取られた顔をして、溜め息をつきながら答えた。
「トラブル対応でクタクタではあるが、それが原因で怒ってるわけじゃない。運転手さん、赤坂までお願いします」
タクシー運転手に行き先を告げる彼は確かに疲れた顔をしている。
「トラブルじゃないならなにが理由で怒ってるの?」
「後で話す。もうホント今日は疲れた」
ネクタイを緩めてシートにもたれかかる彼に同情するように声をかけた。
< 36 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop