一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
その間何度か雪乃にメッセージを送るも既読にさえならない。
俺とのことを悔やんで、悩んでいるのだろうか。
渡辺にそれとなく彼女の様子を聞けば、『山本さん、普通に仕事してるよ』という返答でホッと胸を撫で下ろす。
しかし、いまだかつてないくらい俺は動揺していた。
彼女はどうして俺を誘ったのだろう。
雪乃が興味本位で男の家に行く女ではないのは、経験がなかったことからもわかる。
そんな彼女が好きでもない男を誘うわけがない。
彼女も俺に惚れている?
だから、俺に拒絶されてもいいように、冗談っぽく言って誘った?
彼女の行動に対する戸惑い、苛立ち、不安……いろんな感情がごちゃ混ぜになって俺を苦しめる。
いつだって冷静な俺が惚れた女のことでこんなに心乱されるなんて初めてだった。
取引先での仕事を終わらせ、急いで会社に戻る。
なんとしても彼女を捕まえて話をしたかった。
運良くエレベーターの前で彼女に会うが、その挨拶を聞いてちょっと驚いた。
『あっ……お疲れさまです。お先に失礼します』

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