一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
一応彼女の上司ではあるが、同期ということもあって敬語で挨拶されたことはない。
俺と会って動揺しているのか、それとも避けようとしているのか……。
いずれにせよ逃さない。
『なんで逃げる?』
苛立ちを抑えながら尋ねるが、俺の怒りが伝わったのか彼女はか細い声で答えた。
『なんでって……家に帰るだけ』
『だったら、今日も特に予定はないんだな。夕飯付き合えよ』
俺の誘いに困惑する彼女。
『え? でも……昨日も一緒に食べたじゃない』
俺を避けるようなそのセリフにちょっとムッとした。
じゃあ、明日食事に誘えばオーケーするのか?
そう言い返したいのを抑え、確実に彼女が従うような言葉を投げた。
「昨夜の話、ここでする?」
意地が悪いと思いつつもその話題を持ち出すと彼女は折れたが、俺がどうして怒っているのかわかっていなかった。
雪乃が勝手にいなくなったせいなのに、当の本人は仕事でなにかあったと勘違いしている。
この無自覚さ。
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