一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「こんな時間になっちゃった。なんだかお腹空いちゃったな」
デスクの引き出しから、ラッピングされた包みを取り出す。
これは昨日私が作った本命チョコ。
今年はチョコレートクッキーにしてみた。
毎年作るのだが本人に渡せず、結局自分が食べて帰る。その繰り返し。でも、それも今年が最後だ。
もう彼に作ることはない。
「また渡せなかった」
今の関係を壊すのが怖いし、思いを伝えてもそれから先の私の運命は変わらない。
なのに作ってしまった。
「ただの自己満足よね」
クッキーを摘みつつキーボードを打っていたら、よく知った声が聞こえてビクッとした。
「あれ、山本まだ残ってたの?」
現れたのは沖田怜、二十七歳。
今日チョコのお供え物をたくさんもらった人だ。
沖田不動産の社長令息で、敏腕エリート課長。
百八十五センチの長身に毛先がカールしたダークブラウンの髪。それにイケメン俳優顔負けの端整な顔立ち。
育ちがいいせいか物腰はエレガントだけど、社食のカレーが大好きという庶民的で飾らない性格。
だから人望もあって、四月からは部長に昇進という噂もある。
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