一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
怜がフッと笑って私の手を握ってきたからビックリした。
「なに驚いてんの? 変なものでも踏んだ?」
怪訝な顔をする彼に握られた手を見つめながら説明した。
「違う。急に手を握られたから……なんかそういうの照れ臭くって……」
「俺はこうしないと落ち着かない。逃げられそう」
怜に弄られ苦笑い。
「さすがにここでは逃げないよ。車じゃないと遭難する」
昨日勝手に帰ったの相当恨まれてるな。
「ふーん、じゃあ場所が違えば逃げると?」
スーッと目を細める彼が怖い。
「もう揚げ足取らないで!」
今後のことを考えたら完全否定は出来なくて、わざと怒って文句を言うと、彼は少し笑いながら「悪い」と謝って歩き出す。
空気が澄んでいて湖の湖面に映る富士山はとても綺麗だった。
水も綺麗じゃないとこんな風にならない。
とても趣きがあって気持ちが安らぐ。
「富士山見ると、とっても得をした気分になるね」
私の発言を聞いて彼がクスッと笑った。
「おばあちゃんみたいだな」
「うーん、確かに精神的にもう若くないかも」

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