一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
「まだ風邪でよかったけど、先生が疲労が原因で抵抗力なくなって高熱出たんじゃないかって言ってたぞ」
怜がホッとしたようにハーッと息を吐くのを見て謝った。
「……気をつけます」
最近いろいろありすぎて精神的に弱っていたから風邪なんか引いたのだろう。
怜だけでなく旅館の人にも迷惑をかけて悪いことをした。
診療所で薬をもらって宿に戻ると、若女将が気を利かせて怜にはほうとう鍋を、私にはおにぎりとりんごを持ってきてくれた。
「食欲ないかもしれないけど、薬飲むから少しは胃に入れろよ」
怜の言葉に「うん」と力なく頷く。
おにぎりを少し食べるとリンゴを食べた。
冷たくて口の中が気持ちがいい。
「いろいろ迷惑かけちゃってごめん。豪華な食事だって台無しにしちゃったし……」
自己嫌悪に陥る私の肩に彼は手を置いた。
「気にするな。雪乃はそのリンゴ食べたら薬飲んで寝る」
優しい彼の笑顔に少し心が軽くなる。
「はい」
怜の顔を見て頷き、リンゴを黙々と食べる。
「おっ、リンゴは全部食べたじゃないか。偉いぞ」
茶目っ気たっぷりに言って私の頭を撫でる彼。
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