一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
5、彼女がなぜ俺を拒むのか
薬を飲んでベッドに横になる雪乃のわきに体温計を挟む。
夕食を食べている時に彼女が震え出した時はヒヤッとした。
熱も三十九度もあって心配したが、診療所で診てもらって風邪という診断を受けて安堵した。
ピピッと音がして体温計を抜くと表示を確認する。
「三十八度五分か。朝起きたら下がってるといいな」
上がってはいなくて少しホッとするが、高熱であることに変わりはない。
「怜って……お母さんみたい。母はもういないからこんな風に世話してもらうと思い出しちゃう」
お母さんみたいだなんて初めて言われた。
でも、嫌な気はしない。
それだけ俺を身近に感じているんだと思う。
「じゃあ、今だけ特別に雪乃のお母さんになる」
クスッと笑みを浮かべ、彼女の額にキスをする。
「おやすみ」
優しく声をかけると、彼女はゆっくりと目を閉じてそのまま眠ってしまった。
熱が高いせいか、呼吸が速い。
額には汗が滲む。
相当苦しいだろう。
汗をかけば、そのうち熱も下がる。
だが、風邪が治ってもそれで喜んではいられないように思う。
彼女の汗を拭うと、頭を優しく撫でた。
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