一晩だけあなたを私にください~エリート御曹司と秘密の切愛懐妊~
その声を聞くと今にも寝そうだが、夢を見るのが怖いのか必死に睡魔と戦っているように思う。
「俺が足蹴りして倒す。だから安心して眠れよ」
雪乃の耳元で優しく囁くと、彼女は俺に胸に頬を寄せて目を閉じた。
「うん。……ありがと」
しばらくするとスーッと微かに寝息が聞こえてきて、彼女の頭にそっとキスを落とした。
「いい夢を」

次の朝起きると、雪乃の熱はだいぶ下がっていた。
「三十七度か。あともうちょっとだな」
体温計を見て少し安堵する俺。
「汗かいたからお風呂に入りたいんだけど」
雪乃がベッドから起き上がってそう主張するが、許可しなかった。
「部屋の露天風呂だと上がった時に身体が冷えるし、大浴場は万が一倒れてもすぐに助けに行けないから、タオルで身体拭いて我慢するんだな」
「せっかく温泉にいるのにまだ一回しか入っていない」ハーッと溜め息をついてがっかりする彼女の頭をクシュッと撫でた。
「また来ればいいじゃないか。今は安静にしてること」
その後朝食を食べて、また車に乗って東京に帰るが、そこで一悶着あった。
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