一晩だけあなたを私にください～エリート御曹司と秘密の切愛懐妊～

だが、この様子だと口を割ることはないだろう。
「そうだね。きっと優しいおばあさんだったんだろうね」
当たり障りのないことを言って自席に着くと、渡辺がやってきた。
「沖田課長、おはよう」
いつものように挨拶してくる彼に「渡辺、打ち合わせするから」と声をかけ、隣の会議室に向かう。
「朝からなに？　誰かまたミスった？」
怪訝な顔をする彼に「いいや」と短く返す。
「なんか顔が怖いけど、どうしたの？」
少しビビリながら尋ねる彼に、雪乃の話をした。
「山本の様子が近頃おかしいんだ。彼女の祖母が亡くなってからずっとだ。お前、彼女の家族のことを調べてくれないか？」
渡辺は柔和な性格でいつもヘラヘラ笑っていて頼りなく見えるが、実は頭が切れる。
調査能力に長けていて、土地の買収を進める時も彼は必要な情報を集めてくれた。
「山本さん、まあ最近ちょっとボーッとしてるなって感じることはあったな。そんなに気になる？　家族のことまで調べるのは上司としても同期としてもやり過ぎじゃない？」