転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
 あれから十五年。
 ネヴィルは伯爵位を賜った。
 そして薔薇の花が咲き誇る季節の、この善き日。 私達の愛する子を祝福できる喜びで胸がいっぱいだ。

「エル、綺麗よ」

「お母様、ありがとうございます」

「いつまでも俺の可愛い天使だ、エル」

「お父様ったら……」

「何かあったらいつでも俺に連絡するんだぞ」

「マシューお兄様、もう小さいエルではないのですよ」

 エルはベールに包まれた衣装を身に纏っている。
 私達やマシューにだけ向けられていた笑みがこれからは隣に立つ紳士に向かう事に、寂しさと喜びが身体中を震わせる。

『お父様、お母様。 私、この方の妻になりたいの。 彼は貴族でなくても騎士として立派な仕事をなさっているわ』

『エル。 わかっていると思うが、お前は伯爵令嬢なのだぞ。 その誇りを忘れてはならない』

『もちろんですわ。 それでも私は彼をお慕いしているのです』
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