転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
 コーンエル家の養子になったのは子供の頃。
 両親が亡くなり、一人ぼっちになった所を迎えてくれたのがあの男爵夫妻だ。

 彼らは両親を亡くした私に同情し、とても親切にしてくれた。
 そして男爵家に引き取られる事になったのだ。

 いや、そんなのはどうでもいい。

 そもそも同情なんて鬱陶しくてたまらなかった。
 綺麗な服を着飾って、美味しい料理に傅く使用人。 当たり前のように笑って庭を駆け回る偽りの姉妹。 可哀想な人間に与える施し。

 与えられた自室の窓から外を覗くと、あの女の顔が両親と重なって見えた。
 そして、その顔が時折チラと窓辺に立つ私を視界に捕らえるのだ。

 腹立たしかった。
 あの女の幸せそうな顔が、幸せにしてやっている感一杯のあの両親のようで。
 貧しい生活の中で僅かな恵みと喜びが、感謝と引き替えに手の平に乗せられた屈辱を思い起こさせる。

 結局は男爵夫妻とあの両親、所詮は大差なかった。
 決して私とあの女を引き合わせようとしなかったのだから。
 おそらくは私を姉妹として扱っていなかったのだろう。 或いは家族として認識していなかったのかもしれない。
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