転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
「フロタリア様……そろそろ寮へ戻りましょう」

 ジャクリンが耐えられずに私を促す。
 噂話に、というより私が動かない事にだ。

「えぇ、そうね……」

 ネヴィル様の顔を間近で見なくなってどれくらい経つだろうか。
 話をしなくなってどれくらい経つだろうか。

 噂が真実だとは思いたくないのに、嘘だとも思えない。

「ねぇ、ジャクリン。 私、どんな顔をしているかしら」

 寮へと戻りながら聞いた。
 私は男爵令嬢だ。 例え、どんな裏切りを受けたとしても令嬢らしく振る舞わなければ。

「とても、お綺麗ですよ。 いえ、本当に」

 ジャクリンが嫌味を言う人でないのはわかっている。
 知らない人が聞けば、きっと口元に手を当てて白い目を寄越すだろう。 平民出身のくせに何と無礼な、と。
 それでも労ろうと考えた末の言葉なのだ。
 何も言い返す気にはなれなかった。
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