転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
 いいえ、来た事はない。
 貴賓室の場所すらわからなくて、人に聞いたのだから。
 だが、どうしてこんなにも落ち着かないのだろう。 怖くて、すぐにでも逃げてしまいたい。

「そうですわね。 フロタリア様の記憶はないのですから」

「エマ様? 何をおっしゃって……」

「だからこそ、そんなにも身体が震えていらっしゃるのでしょう?」

「わかりません、何もわかりません」

「ここでフロタリア様の身に何が起きたのか、私は存じません。 ですが、想像する事はできます」

 やめて、やめて。 言わないで。
 点と点が繋がりそうになる、そんなの知りたくない。

「そのお茶をお飲みにならないのが証拠でしょう?」
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