転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
 まるでわからない。勝手に話を進められても理解できない。
 転生、記憶、何を言っているのだろうか。
 ネヴィル様との婚約の件を相談しに帰宅したのがこの事態を引き起こしている事だけは理解できるのに。

「でもね、フロタリア。 貴方はもう転生しなくてもけっこうよ。 これから私達が殺して土に埋めてあげるから。 だから貴方の向かうのは転生先ではないの」

「なぁ、知ってるか? ネヴィルはエマを何度も部屋に連れ込んで二人きりの時間を過ごしていたぜ。 フロタリアという婚約者がいるのに、下衆な奴だと思わないか?」

「ど……して、そんなにまで……私を憎むの……?」

 やっと出た声は掠れて途切れ途切れだ。

「私の幸せを貴方が奪ったからよ。 当たり前のような湯に浸かって、地位も未来をも約束された婚約者もいて。 とにかく妬ましくて大嫌いなのよ」

「お前は俺の結婚の申し込みを鼻で笑って断った。 ネヴィルしかお前には見えていなかったからな」

「知らな……。 そんな、の私……知らない……」

「でしょうね。 では、私の存在も知らないかしら?」

「どういう、事……?」

「私はコーンエル家の養女になった、もう一人の娘」

「え?」

「血の繋がらない貴方の姉妹よ」

「そして俺はコーンエル家の庭師の息子だ」
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