転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
 人間はこんなにも残酷で、こんなにも簡単に全てを捨てられるのだ。
 いや、本当に残酷なのは私なのだろう。 私のせいで、二人は地獄へと堕ちて来たのだから。

 ここで知り合ったデュークは優しくて、私の知らない書物の世界をたくさん教えてくれた。 その表情は温和で、もしかしたら友人になれたかもしれない。
 同部屋になったジャクリンは明るくて朗らかで、塞ぐ気分をいつも上げて慰めてくれた。
 彼女がいなければ、私はこの学校を楽しむ事はできなかったと思う。

 それが全て私を追い込む為の偽りだったとしても。

 私は確かに救われたのだ、この二人に。
 だから、もういい。 ネヴィル様とエマ様が自らの幸せを選ぶのはわかっていたから。
 私にとってネヴィル様は絶対で、エマ様は温かかった。 私には彼女がネヴィル様を奪った憎むべき相手だとは思えない。
 どうしてだか、二人が笑い合う光景を思い浮かべると、心底ホッとするのだ。
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