転生令嬢~彼が殺しにやって来る~
 つまり、飛んで来たのだ。 私にはどこだかわからない、決して知る事のできない場所に。

 窓が一つもないので外観はわからないが、室内はどこもかしこも白く、家具や装飾品は見当たらない。 絵画も花瓶に飾られた花も、そして行き交う人の姿すら見当たらない。

 冷たさすら感じる雰囲気なのに、心が冷えないのは不思議だ。
 コゼットの無表情が私にはいつも温かく感じられたのと近い気がする。

「ここです」

 コゼットが連れて来たのは、白いドアの前。
 といっても、歩く通路や壁までが白かったので、そこにドアがある事すら気付いていなかったのだが。

 中に入ると寝台があり、横たわる人物の顔色は土気色をしている。 まるで今にも息絶えそうだ。

「エマ様……」

 あんなにも美しく、誰もが見惚れる輝きを持っていたのに。

「フロタリア」

 その寝台の側にいたのは、やはりネヴィル様。
 という事は、彼も転移者だというのだろうか。
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