昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う
それから間もなくして、電車は海辺の駅に到着した。
「わあ……!」
降りた瞬間、目に飛び込んでくる海のきらめき。窓ガラスを介して見るよりずっと綺麗で、意図せず興奮の声が飛び出る。
肌に巻きついてくる潮風の匂いを、肺いっぱいに吸い込もうとしたとき。
「えっ」
肩を持たれたかと思うと、なぜか海が見えないほうへ、体を回転させられた。
「ごめん、永田さん。海はあとのお楽しみ」
「えっ」
「今からは、バスに乗ります」
「ええっ!?」
二段階式のサプライズ。雨夜くんにそのまま誘導されて、バス停へ。
はかったようなタイミングですぐやってきたバスに、エスコートしてもらって乗り込む。
「永田さん、海の反対は?」
混乱しながら一番奥の座席に座ったとき、雨夜くんがいたずらっぽく笑って聞いてきた。
「えっ!えっと……みう?」
「ははっ、文字の反対じゃなくて」
「あ……じゃ、じゃあ……山⁉︎」
「うん、正解」
雨夜くんがうなずいて、口元に笑みを広げる。
「山っていうか、渓谷なんだけどね。今から行こうとしてるの」
「けいこく……?」
「うん、山に囲まれた川。泳ぐわけじゃないから、ただ海を見に行くだけだとつまらないかなって思って。だから渓流散歩も、一緒にしよう。したことある?」
「な……ないない!楽しみ……!」
ふるふると首を横に振りながら、わたしは目を輝かせる。
渓流散歩。だからスニーカー指定だったんだ。