昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う

それから間もなくして、電車は海辺の駅に到着した。


「わあ……!」


降りた瞬間、目に飛び込んでくる海のきらめき。窓ガラスを介して見るよりずっと綺麗で、意図せず興奮の声が飛び出る。

肌に巻きついてくる潮風の匂いを、肺いっぱいに吸い込もうとしたとき。


「えっ」


肩を持たれたかと思うと、なぜか海が見えないほうへ、体を回転させられた。


「ごめん、永田さん。海はあとのお楽しみ」

「えっ」

「今からは、バスに乗ります」

「ええっ!?」


二段階式のサプライズ。雨夜くんにそのまま誘導されて、バス停へ。

はかったようなタイミングですぐやってきたバスに、エスコートしてもらって乗り込む。


「永田さん、海の反対は?」


混乱しながら一番奥の座席に座ったとき、雨夜くんがいたずらっぽく笑って聞いてきた。


「えっ!えっと……みう?」

「ははっ、文字の反対じゃなくて」

「あ……じゃ、じゃあ……山⁉︎」

「うん、正解」


雨夜くんがうなずいて、口元に笑みを広げる。


「山っていうか、渓谷なんだけどね。今から行こうとしてるの」

「けいこく……?」

「うん、山に囲まれた川。泳ぐわけじゃないから、ただ海を見に行くだけだとつまらないかなって思って。だから渓流散歩も、一緒にしよう。したことある?」

「な……ないない!楽しみ……!」


ふるふると首を横に振りながら、わたしは目を輝かせる。

渓流散歩。だからスニーカー指定だったんだ。
< 169 / 365 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop