昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う


もしもの話。もし、記憶が消せるなら。

あることにまつわる記憶だけを、完全に消してくれるサービスなんてものが、この世にあるとするなら。


どんなに高い料金を払ってもいい。

副作用があったっていい。わたしは絶対に、それを利用することを選ぶ。


美和に関する部分だけ、消しゴムをかけたみたいに綺麗さっぱり消去して。

そうしたらわたしは、過去のトラウマにとらわれることなく、笑って生きていくことができる。

許せないという黒くて汚い気持ちに浸かることなく、自分を嫌わずに生きていける。


でも……起きてしまったことを消す、なんて無理なんだ。


雨夜くんが気持ちの爆発を受け止め、抱きしめてくれて。

そのおかげで、ショックに陥っていた心は少し落ち着いて。


わたしは翌日から、学校に行くことができたけれど……頭の中はまだまだ、美和へのうらめしい気持ちでいっぱいだった。


考えるなと思えば思うほど、美和のことを考えてしまう。

久しぶりに本人に会ってしまったことは、きっとわたしにとって、事故にあったくらいの衝撃だった。


傷も後遺症も、重度。

美和の姿形を目にしてしまったせいで、必死に薄めようと頑張ってきた記憶たちを、ついさきほど起こったかのように色濃く感じてしまう。
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