昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う



ーー深く深く、海の底まで沈んでしまったみたい。


学校に向かう電車の中。

ガタンゴトンといろんな方向に揺られながら、わたしはそんなことを思っていた。


朝の満員電車はいつだって、まるで水の中にいるかのように息苦しい。

当然といえば当然だ。せまい空間にぎゅうぎゅうに詰め込まれて、みんなが酸素を取り合っているんだから。


でも、理由はそれだけじゃなくて。一番の原因はわたし自身。

首が折れそうなほどうつむいて、みずから空気の通り道をふさいでしまっているからだ。


電車に乗っている時間は、おおよそ四十分。

けっこう長くて、しばらくすると首根っこのあたりがじんじんと痛み出す。


それでも……痛くても苦しくても、顔を上げるわけにはいかないんだ。

近距離で顔を見せるわけにはいかない。


わたしの外見は、人を不快にさせてしまうから。


「まもなく、常和台(じょうわだい)―。常和台です」


うつむき続けていよいよ首が落ちそうになったころ、電車はやっと、高校の最寄り駅に到着した。

この春から新一年生として通い出したばかりの常和高校は、駅から徒歩五分の立地にある。
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