昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う
◇
ずうっと昔。わたしがまだ幼くて、お父さんがまだ元気で、病院じゃなく家にいたころ。
『温美の目は、父さんの目にそっくりだなぁ』
お父さんの膝に座らせてもらいながら、そんな風に話されたことがある。
『そっくりー?』
『うん。ちょっと垂れてて、奥二重で。温美、目と鼻は父さんで、輪郭と口は母さんだな。ちょうど半分だ』
ちょうど半分。その言葉が嬉しくて、幼いわたしは首をそらして、お父さんを見上げた。
お父さんは、幸せそうに笑っていて。
お父さんの瞳の中には、はにかんだわたしがうつっていた。
『温美は可愛いな』
ほおに優しく手を添えて、お父さんが言う。
『お父さんの宝物だ』
――ミーンミンミンミン……。
耳に入ってきた、騒がしい音。
それをセミの鳴き声だと認識して、わたしは布団の上で目を覚ました。
昨夜はまったく眠りにつける気がしなかったのに、いつの間にか寝ていたみたいだ。
ゆっくり上体を起こして、不思議な感覚に目をまたたかせる。
嫌な汗はかいていない。悪夢で跳ね起きたときとは真反対の、すごく心地いい目覚めだ。
それに、なんだかとても懐かしい夢を見た気がする。
だれかが優しいまなざしで、わたしを見守ってくれていた夢。
うまく思い出せないけれど、あれは。
ずうっと昔。わたしがまだ幼くて、お父さんがまだ元気で、病院じゃなく家にいたころ。
『温美の目は、父さんの目にそっくりだなぁ』
お父さんの膝に座らせてもらいながら、そんな風に話されたことがある。
『そっくりー?』
『うん。ちょっと垂れてて、奥二重で。温美、目と鼻は父さんで、輪郭と口は母さんだな。ちょうど半分だ』
ちょうど半分。その言葉が嬉しくて、幼いわたしは首をそらして、お父さんを見上げた。
お父さんは、幸せそうに笑っていて。
お父さんの瞳の中には、はにかんだわたしがうつっていた。
『温美は可愛いな』
ほおに優しく手を添えて、お父さんが言う。
『お父さんの宝物だ』
――ミーンミンミンミン……。
耳に入ってきた、騒がしい音。
それをセミの鳴き声だと認識して、わたしは布団の上で目を覚ました。
昨夜はまったく眠りにつける気がしなかったのに、いつの間にか寝ていたみたいだ。
ゆっくり上体を起こして、不思議な感覚に目をまたたかせる。
嫌な汗はかいていない。悪夢で跳ね起きたときとは真反対の、すごく心地いい目覚めだ。
それに、なんだかとても懐かしい夢を見た気がする。
だれかが優しいまなざしで、わたしを見守ってくれていた夢。
うまく思い出せないけれど、あれは。