昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う

きっとわたしを勇気づけるために、いつもより豪華にしてくれたんだな。

お母さんには今日、美和に会うことを伝えているから。


こういう励まし方は、お母さんならではの優しさだなと思う。

言葉で頑張れ頑張れって言うんじゃなくて、こうしてさりげなく、負担にならないように応援してくれる。


ウソをつき続けるわたしの口を無理やり割ろうとせずに……待ってくれたように。


「……いただきます」


手を合わせてから、わたしは思いきり大きな口を開けて、トーストをほおばった。


「甘っ! 美味しい!」

「ふっふっふ、でしょー!」


優しさには、いろんな種類がある。

お母さんの優しさは、広くて大きな海みたいだ。


そうしてトーストのボリューム感と、チョコレートの甘さを満喫させてもらったあと。

わたしは顔を洗いに、洗面所に向かった。


洗面台の前。スッと視線を上げ、鏡の中の自分を見つめる。

自分と見つめ合う。わたしがずっと、できないでいたことだ。


いじめられて、自分の外見を嫌うようになってしまったときから、わたしは鏡を見ることが苦手だった。

鏡の中の自分と、極力目を合わさないようにしていた。嫌悪していた。


でも今、わたしは真っすぐに鏡を見ることができている。
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