昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う


「ラジオ体操第一。腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動から――」


その日。俺が目覚めて最初に聞いた音は、それだった。


音の出どころは居間だ。

寝ていた部屋から居間に行ってみると、祖母がテレビに向かって両腕をブンブン回していた。

テレビでは、聞いた音の通りラジオ体操がかかっていて。

女の人が伸びやかに、見本の動作を行っている。


「おはよう……どうしたの?」

「ん? ああ、おはよう。起きたのかい」


腕を動かしながら、祖母は俺のほうを振り返ってニカッと笑った。


「手術のために体力をつけとかなきゃいけないだろ。だから毎日、やろうと思ってね」

「……!」


大きく開かれた口から発された言葉に、うっかり涙腺を刺激される。


「涼も一緒にどうだい」

「……遠慮しとくよ」


苦笑いしてみせつつ、本当のところは声がふるえないようにと必死だった。

涙が落ちないよう、ギリギリでこらえていた。
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