昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う

『わたしはもう、長くないかもしれないね』


病院に行ったあの日から、祖母はしばらくの間、落ち込んでいた。

サバサバとしていて常に前向きな性格はどこかにいってしまったみたいで、ぼうっとひとり、外を見ていることが多かった。


手術費を早めに稼ぐために、俺が休学して働く時間を増やすことにも大反対で。

手術なんて受けない、金の無駄だとの一点張り。負担をかける自分は死んだほうがいい、なんて言葉も聞かれたくらいだった。


でも少ししてから、祖母はマイナスなことを言わなくなった。

俺が、母親に会いに行くと決めたからだ。


『会いに行ってみようと思う』


そう話したとき、祖母は泣いた。

ボロボロと、細い体がなくなってしまうのではというほどに泣いて。

そして涙が引いたあと、そこにいたのは、前のように瞳に力を宿した祖母だった。


『わたしができることは、うじうじ落ち込むことじゃなくて、病気と闘うことだね』


くしゃくしゃな笑顔で、そう言ってくれて。
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