昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う

その、五分間。わたしが空を見上げるなんてことは、一度もない。

ひたすら地面とにらめっこしたまま歩いて、校門をくぐって教室へ向かう。


教室へ入る瞬間も、うつむいたまま。

だって正面を向いて入って、クラスメートのだれかと目が合ってしまったら……なんて考えると、寿命が数年縮まりそうだ。


「そのペンケース可愛いよね! どこで買ったのー?」

「これ? 最近駅前にできた雑貨屋さんだよ! あそこの店員さんがさ――」


入学式から約一週間が経過した今、一年三組では仲良しメンバーが固定しつつあって。

おのおの気が合う友達を見つけて、話に花を咲かせている。


にぎやかな会話が飛び交う中、わたしはそそくさと教室後方にある自分の席に向かった。


「……は」


イスに座って、まわりに聞こえないボリュームで息をつく。


やっとここまで来た。でも登校だけでこんなに気力を使ってしまって、大丈夫かな。

一日はまだ……はじまったばかりなのに。


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