昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う
「その親友……だった、子が。ずっとポニーテールに、してたから……だから、ポニーテールを見ただけで……いつも、トラウマが呼び起こされて……」
「………」
「裏切られた瞬間を、思い出して……心臓がバクバク、して……っ、こ、こんなの、大げさだって……自分、でも……思ってるん、だけど……っ」
ただ、同じ髪型を見ただけで。
それだけでこんな風に動悸がして、まわりがすべて敵になったように怖くなって。
こんなのおかしい。どうかしている。
「よ、弱い……よね……」
でも、どうにもできないんだ。
前を向こうとしたところで、こうやってすぐに後退する。後ろを見るのばかりが得意。
わたしは、そんな自分が。
「〜情けない……っ」
ふるえながら、言葉を発した。
かすれていて弱々しいけれど、でも叫びのような声だった。
雨夜くんが、ベンチから立ち上がる。
そしてわたしの正面にしゃがんで、わたしの両手をそっと握った。
「……弱くない」
「……っ」
「情けなくなんか、ないよ」
雨夜くんの言葉が、縮こまった心を癒すように響いてくる。
手から伝わる雨夜くんの体温が、わたしをまるごと包み込む。
「だって……本当に弱い人間は逃げるから。逃げた人は、自分を情けないなんて思う機会すらないんだよ。永田さんは、ちゃんと向き合ってる」
握られる手の力が、強くなる。
「永田さんは十分……頑張ってるよ」
そのときぶわっと、あたりに強い風が吹いた。
その風が、わたしの頭から帽子を浮かす。黒い帽子が、風にのって飛ばされかける。
「……っと」
雨夜くんはさすがの反射神経で、サッと飛んで帽子をキャッチしてくれて。
そしてもう一度しゃがんで、わたしに手渡した。